『集弾性アップへの道』


●集弾性に影響する項目
●集弾性アップのためには?
●理想の構造を考える
●理想の構造の実現を考える
●理想の構造を試作する
●実験結果
●まとめ

今回の研究テーマは、ズバリ『集弾性の向上』。今までに無い新しい視点で『集弾性アップ』に迫ってみたつもりです。必ずや、皆様にご満足していただける内容であると確信しております。全てのエアガン愛好家の皆様にお読み頂き、更なるチューニングにお役立て頂ければ幸いです。

●『集弾性の向上』それは、多くのエアガン愛好家の『夢』

 「エアガンの魅力は?」と質問されたら、貴方は、なんと答えますか?
 銃の形をした玩具のうち、モデルガンとの決定的な違いはやはり、『弾丸を発射する』ということでしょう。では、エアガン愛好家の『夢』というと何でしょう?多くの皆様が『素晴らしい集弾性』と答えるのではないでしょうか?
 『素晴らしい集弾性』、『集弾性の向上』は、エアガンにとって、『最大にして永遠のテーマ』ではないでしょうか?
 今まで、何度も、語られてきた『集弾性の向上』、今回は少し違った方向から迫ってみたいと思います。

●BB弾の通り道はどうなってるの?

 BB弾になったつもりで、通り道の周囲の状況を見てみましょう。東京マルイ製電動ガンの場合で考えていきます。

●集弾性に影響する項目

 BB弾の周囲の状況を、影響する項目に分けてみましょう。  細かく見ていくと、上記のように、多種多様非常に多くの項目が影響していることが分かります。
 これらの項目を分類すると、大きく分けて以下の3項目になります。
@使用環境に関する項目
ABB弾に関する項目
Bエアガンに関する項目
 @使用環境に関する項目については、実験時には、気温、湿度、気圧をそろえて、無風状態で実験するということはできますが、実用上、制御できません。『神のみぞ知る世界』といえます。
 ABB弾に関する項目については、BB弾の総合的精度が良くなるに連れて、自然と改善されて行きます。BB弾製造メーカーの努力により、今後、良くなっていくことでしょう。
 残る問題は、Bエアガンに関する項目ですが、細かく見れば様々な項目が影響を与えていると言えます。

●集弾性アップのためには?

 どうすれば、集弾性はアップするのでしょうか?  BB弾が射出され、マズルから十分離れてしまったら、あとは、『神のみぞ知る世界』です。BB弾自体の誤差項目以外には、射出時のBB弾の持っている速度、回転と外乱だけが支配する世界です。
 つまり、できることは、「良いBB弾を使う」ことと「射出時のBB弾の状態を均一に安定させる」ということです。逆に言えば、「射出時のBB弾の状態を均一に安定させる」ことで、「集弾性はアップする」と言えます。  では、どうすれば、射出時のBB弾の運動(回転運動含む)をより一定にする事ができるのでしょうか?
 今回は、今までほとんど語られることの無かった『BB弾は歪である』ということからはじめます。
 『BB弾は歪である』ということは、相当数発射した後のホップアップタイプのインナーバレルのチャンバー部を見ると分かります。ホップアップ突起に対する内面下部が、広い範囲で、こすられて光っているのが見て取れます。接触点が一定であれば、その部分だけ光っているはずです。広く光っているのは、BB弾が歪んでいるために接触点がばらついていることを示しています。
 登場以来、BB弾は、確実に真球に近づいてはいますが、工業的に見て、必ずしも高精度であるとはいえません。昨今のエアガンの作りと比較すると、むしろ精度不足といえます。しかし、精度以外に求められるもの(土に還るバイオBB弾、低価格化など)を両立した上での精度の改善は容易であるとは言えないと考えます。
 ノーマルよりも高精度に製作されたカスタムバレルが、思う様な良好な結果を得られない原因の一つが『BB弾は歪である』ということだと考えてます。
 従って、『BB弾は歪である』ということを大前提として考えていく必要があると考えています。また、BB弾そのもの以外にも、解決すべき多くの問題点があります。今回は、集弾性に最も大きな影響を及ぼすと考える、BB弾の保持方法について、高価な高精度BB弾だけでなく、最も普及しているクラスのBB弾でも、効果のある方法を考えていきます。

●理想の構造を考える

 それでは、どうあるべきか考えて行きましょう。  以上の考察から導き出される『理想の構造』は、以下の様になります。

■チャンバー各部名称

■従来のインナーバレルのBB弾保持部

@真球のBB弾の場合

AいびつなBB弾の場合



★従来のインナーバレルの問題点(図、写真参照)

BBB弾保持部写真
チャンバー部より、BB弾の保持状態を見たもの。BB弾が下方に寄っている。また、下側の接触点も真下とは限らない。

■『参式滑空銃身』のBB弾保持部

@真球のBB弾の場合

AいびつなBB弾の場合



★今回のインナーバレルの改善点

BBB弾保持部写真
BB弾が、ほぼ中心で保持されている。下側の接触点は、真下になっている。

●理想の構造の実現を考える

 それでは実際に理想の構造を実現する方法を考えてみます。

●理想の構造を試作する

 ということで、色々考えてきましたが、所詮「仮説」でしかありません。そこで、効果があるかどうか「実験」してみなければなりません。「実験」のためには、「試作」する必要があります。各部分を考えて行きます。

○BB弾保持部

 理想のBB弾保持部を実現するために、真下に十分な高さの接触部を設けることを考えます。
 東京マルイ電動ガンのノーマルバレルを使うと仮定すると、公称内径は6.08mmです。BB弾については、公称直径5.96mm±10μmと仮定します。すると、60μm(0.06mm)位の高さの接触部を追加すれば良いことになります。
 先ず試そうとしたのは、セロハンテープ(厚さ55μm)、厚さ自体はいい感じでした。しかし、耐久性はまるで有りませんでした。
 次に考えたのが、テフロンコーティングテープ(厚さ100μm)です。貼ってみました。改善されているようにも感じられましたが、やはり、厚さが適切でないためか、疑問の残る結果でした。また、耐久性も不足しています。数百発は、耐えられるという感じでした。
 次に試したのが、ステンレスシートテープ(厚さ50μm)です。粘着剤付でしたが、接着力があまりにも弱いので、接着剤を、燃やして(厚さ45μm)、嫌気性接着剤で固定しました。結果は良好でした。しかし、いつ剥がれてしまうか心配な状態です。耐久性は、「千発は耐えらるかな?」という感じでした。その後、実際に剥がれてきました。
 というわけで、さらに、接触部を別部品とする方法で「試作」しました。この時の部品形状決定に、以下の点を考慮しました。  結局、板厚0.2mmの鉄板を、折り曲げ加工した部品(センターチップ)を、溝および、接着面を追加工した電動ガンのノーマルバレルに、治具を使って接着するという形式にしました。板を折り曲げた曲面部分でBB弾を接触保持する構造になりました。(図参照)

■試作品の構造


○ホップアップ突起

 東京マルイ電動ハンドガン等のホップレバーを参考に中央を3mm切り欠いたクッションチューブの代わりの部品(2点ホップ部品)を製作しました。
 また、ホップアップ突起を加工して、Vホップタイプの部品(Vホップ部品)を製作しました。左右2点の間にエアが漏れる隙間が、できにくいように、Vミゾではなく、円弧形状で切り欠きました。

★理想のBB弾保持部

 以前より、「2点ホップ」、「Vホップ」といわれる左右2点接触のホップアップ突起を有するホップアップシステムは、安定しているといわれています。これはどうしてなのでしょうか?
 まず、上側1点接触のホップアップシステムでは、BB弾が垂直軸に対して回転してしまう可能性が考えられます(図参照)。この方向の回転は、ホップアップ回転やホップアップ中心軸を安定させようとしたとき、悪影響しか与えません。
 これに対し、左右2点接触のホップアップシステムは、垂直軸に対して回転してしまうこと無いと考えていいでしょう。更に、球体の安定した支持方法である3点支持になっているから安定しているのだと推測します。
 重力の働いている球体は、3点を拘束すれば、安定して保持できます。3本足のテーブルが安定するのと似たようなことだと思ってください。
 ホップアップシステムを考える場合、3点が決まり、どの点が滑るかが決まれば、ホップアップ中心軸が決まります。3点の位置が、安定していればホップアップ中心軸は安定します。
 左右の2点接触のホップアップ突起の場合、この2点を結んだ線を中心にして回転がはじまります(図参照)。  BB弾が歪んでいるために下側の接触点の位置がばらついてしまうと、ホップアップ突起の左右の2点を結んだ線自体を強制的にずらしてしまい、そのずれた軸を中心として回転がはじまります(図参照)。つまり、ホップアップ中心軸が強制的に変更されてしまいます。更に、BB弾が回転するに従って、接触点も左右に移動する場合があります。こうなると、ホップアップ中心軸は、更に、ばらついてしまいます。
 この状況に対し、下部に十分な高さの接触部を設けることにより、下側の接触点の位置を限定する事ができます。そうすると、ホップアップ中心軸の傾き、ばらつきを小さく抑える事ができます。
 更に、接触部を設けることにより、バレル中心にてBB弾を保持する構造にする事ができます。また、ホップアップ突起の押し付けが少なくなるため、抜弾抵抗のばらつく可能性の範囲を小さくする事ができます。

■上側1点接触の場合

■左右2点接触の場合

■左右2点接触でいびつなBB弾の場合

★実験使用部品略号

使用部品略号
ノーマルバレルN
センターチップバレルR
2点ホップ部品2
Vホップ部品V

★実験組み合せ条件

記号
ノーマルバレル+クッションチューブ+ノーマル突起N
ノーマルバレル+2点ホップ部品+ノーマル突起N-2
ノーマルバレル+2点ホップ部品+Vホップ部品N-2-V
センターチップバレル+クッションチューブ+ノーマル突起R
センターチップバレル+2点ホップ部品+ノーマル突起R-2
センターチップバレル+2点ホップ部品+Vホップ部品R-2-V
各組み合せにつき、10発グルーピング/20mを3回行いました。

★実験条件

東京マルイP90TRをクラフト台にて固定
ホップアップ:ゲーム用長距離設定
初速:81〜82m/s
BB弾:エクセル製セミバイオ0.2g
バレル長:247mm
シリンダ:P90TR標準加速シリンダ
メカBOX、チャンバー部品、ノーマルバレルは、個体差が無いと仮定。
野外、微風

●実験結果

 センターチップタイプの試作品を用いて実験を行いました。同時に、2点ホップ部品、Vホップ部品の組み合せも実験しました。  以下に実験結果を示します。
組合せ集弾性[mm] 10発セミオート/20m
1回目2回目3回目平均
N310207200239
N-2236200310249
N-2-V225165190193
R163163186171
R-2205220132186
R-2-V152132162149

●まとめ

 実験結果を統計的手法に従って計算すると、ノーマルバレルに対して、センターチップバレルは、『95%以上の確率で、改善されている』という結果になりました。一部疑問の残る部分も有りますが、外乱の関係や微妙な調整の問題だと考えます。
 カスタムバレルは、効果がはっきりしないものが多い中、『安定した明確な結果』が出ていると考えます。

<お知らせ>

今回のカスタムバレルは、個人で自作可能なレベルでは無いと考え、皆様にこの効果を実感して頂くために、製品化をいたしました。必ずや多くのエアガン愛好家の皆様に満足していただけることと確信しております。ぜひ、お試しください!
 なお、この研究報告に関連して、「特許」を出願しています。従いまして、ここに記載された内容を無断で使用したカスタムバレル製品の製造販売は、ご遠慮ください。


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